ビットコインの価値を支える「信頼」はどこから生まれるのか

ビットコインの価値を支える「信頼」はどこから生まれるのか

綾城匡人
綾城匡人
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株式会社メタプラネットでIR・資本戦略アソシエイトを務めております、綾城匡人(あやきまさと)と申します。

本稿では、「ビットコインの価値を支える信頼は、どこから生まれるのか」というテーマについて考えていきます。

ビットコインの価値について、一度は次のような説明を耳にされたことがあるのではないでしょうか。

「発行上限があるから価値がある」

といった説明です。

もちろん、これはビットコインの重要な特徴の一つです。

歴史を振り返っても、金(ゴールド)のように供給量が限られた資産は、長らく価値保存手段やインフレヘッジとして機能してきました。

ビットコインにも発行上限があり、この固定された供給量は、価値を考えるうえで欠かせない要素です。

しかし、単に発行上限があるだけで価値が生まれるのであれば、同じように供給量を限定したデジタルコインを作ることは、技術的にはいくらでも可能です。

では、なぜ数あるデジタル資産の中で、ビットコインが価値あるものとして広く受け入れられてきたのでしょうか。

その答えの一つとして考えられるのが、ビットコインが備える「容易には書き換えられない記録」の仕組みです。

本稿では、この仕組みを支える要素として、プルーフ・オブ・ワーク、ハッシュレート、生産コストという三つの観点から、順を追って見てまいります。

ビットコインは「何」を信頼しているのか

ビットコインの価値の土台を考える前に、まずは、私たちが普段使っている円やドルが、どのような仕組みによって価値ある貨幣として成立しているのかを整理してみましょう。

現在の円やドルは、「法定通貨(フィアット)」として、国や中央銀行に対する信用を基盤に成り立っています。また、歴史的には「金本位制」という仕組みも存在しました。この制度のもとでは、通貨の価値は、地球上に限られた量しか存在しない金(ゴールド)という物理的な資産によって裏付けられていました。

このように、貨幣や資産が価値を持つためには、その価値を支える何らかの信頼の土台が必要です。そうでなければ、昨日まで安心して受け取り、保有し、使用できていたものが、今日も同じように取り扱えるとは限らなくなってしまうでしょう。

では、特定の国が発行しているわけでもなく、金(ゴールド)のような物理的実体も持たないビットコインは、何を基盤として成り立っているのでしょうか。

そのカギとなるのは、改ざんが極めて困難な「記録」、すなわちビットコインの取引履歴が、世界中のコンピュータによって共有・検証される分散型のネットワーク上で管理されていることへの信頼にあると考えられます。

ビットコインが価値ある資産として保有され、他者に送ったり受け取ったりできるためには、「誰が持っているのか」「誰から誰へ移ったのか」という所有と移転の記録が、確かなものとして維持されていなければなりません。どれほど供給量が限られていても、その履歴があとから簡単に書き換えられてしまうのであれば、安心して保有することも、他者へ送ることも難しくなります。

したがって、ビットコインの価値を考えるうえでは、価格や需要そのものだけでなく、「書き換え困難な所有記録への信頼が、どのように成立しているのか」という点が重要な視点となってきます。

プルーフ・オブ・ワークは、なぜその信頼を支えるのか

この信頼を支えている仕組みが、「プルーフ・オブ・ワーク」です。

ビットコインでは、送金などの取引記録が一定量たまると、それらが一つのブロックとしてまとめられます。そして、そのブロックをブロックチェーンの末尾に正しく追加するために、世界中のマイナーが計算競争を行います。

この競争で条件を満たす計算結果を最も早く見つけたマイナーが、新しいブロックを正式な記録として追加することができます。こうしてビットコインでは、取引履歴がブロック単位で順番に積み上がっていきます。

プルーフ・オブ・ワークの大きな特徴は、記録を一つ先へ進めるために、現実世界のコストを要求する点にあります。マイナーには、たとえば次のようなコストがかかります。

  • 専用機材(ASIC)の導入

  • 稼働のための電力

  • 設備の運用

  • 維持管理と資本コスト

では、なぜマイナーはこれほどのコストを払ってまで、計算競争に参加するのでしょうか。

新しいブロックを最初に追加できたマイナーには、報酬として、新規発行されるビットコインと、そのブロックに含まれる取引手数料が支払われます。つまりマイナーは、「コストを払ってネットワークを守るボランティア」ではありません。投じたコスト以上の見返りを期待して、自発的にネットワークの維持に参加する経済主体です。

ただし、報酬を受け取るためには、ネットワーク全体のルールに従った正当なブロックを作らなければなりません。不正な取引を含むブロックは、他のノード(ネットワークに参加している多数のコンピューター)によって拒絶され、投じたコストは全て無駄になります。マイナーは、自分自身の利益のためにこそ、ルールを守るインセンティブを持つことになります。

ビットコインの記録が守られているのは、誰かの善意だけによるものではなく、合理的な利益追求を行うマイナーたちが、ルールに従って行動するよう設計されていること――ここに、プルーフ・オブ・ワークの重要な特徴があると言えるでしょう。

さらに、ネットワーク全体の計算能力が上がっても、計算問題の難易度はそれに応じて自動的に調整されます。そのため、ビットコインの記録を維持するには、継続的にコストがかかり続けます。

この性質が、過去の記録を書き換えることを極めて難しくしています。

仮に過去のブロックを書き換えようとすると、そのブロックだけでなく、その後に続くすべてのブロックも作り直す必要があります。しかも、その間にもビットコインのネットワークでは新しいブロックが追加され続けます。そのため、攻撃者は他の参加者よりも速く計算を続け、正しいチェーンに追いつき、追い越さなければなりません。このような攻撃は一般に「51%攻撃」と呼ばれ、成功させるには、ネットワーク全体の計算能力の過半数を支配し続ける必要があるとされています。

つまり攻撃者は、ビットコインのネットワーク全体の過半数に相当する計算能力を用意し、それを動かし続けなければなりません。ネットワークが大きくなるほど、必要な計算能力も大きくなり、攻撃にかかるコストは現実的に成立させることが極めて難しい水準になります。また、一時的に大きな計算能力を確保できたとしても、それを維持できなければ、他の参加者が作る正しいチェーンに再び追いつかれる可能性があります。そのため、過去の取引履歴を書き換えることは、現実的には極めて困難だと考えられています。

このように、ビットコインの記録を書き換えるためには、ネットワークを守る側を上回るコストを継続的に支払い続ける必要があります。この「現実世界のコストを伴って積み上げられた記録」こそが、ビットコインの書き換え困難性を支える中核となっていると見ることができそうです。

では、ここまで述べてきた「現実世界のコスト」は、現時点でどれほどの規模にまで膨れ上がっているのでしょうか。ここからは、それを可視化する二つの観測指標、ハッシュレートと生産コストを通じて、ビットコインの裏付けとなる経済的規模を見ていきます。

ハッシュレートから見る、ネットワークを支える物理規模

ハッシュレートとは、ビットコイン・ネットワーク全体で、1秒あたりどれだけ多くの計算が試みられているかを示す指標です。ここでいう計算とは、新しいブロックを見つけるために、一定の条件を満たす値を探す「ハッシュ計算」を指します。言い換えれば、世界中のマイナーがどれほど大きな計算競争に参加しているかを表すものです。

ハッシュレートは、一般に「EH/s(エクサハッシュ毎秒)」という非常に大きな単位で表されます。1 EH/s は、1秒あたり10の18乗回、すなわち100京回のハッシュ計算を意味します。

ただし、この数字だけを見ても、その規模感を直感的に掴むことは容易ではありません。そこで以下では、スーパーコンピュータや最新のマイニング機器との比較を通じて、ビットコイン・ネットワークを支える機材・電力・設備投資の規模を確認していきます。

【表1:スーパーコンピュータとビットコイン・ネットワークの計算規模比較】

表1. WhatsMiner 63S Hydro を前提に再構築したと仮定した場合のビットコイン・ネットワーク全体と、米エネルギー省(DOE)の El Capitan スーパーコンピュータ(100台以上の筐体で構成され、約100万台のスマートフォンに相当する計算能力を持つ)、および Top 500 リスト全体との比較。 

出所:Stephen Perrenod/OrionX『Top Crypto Supers 15th Report November 2025』スライド21(Table 6)に基づき株式会社メタプラネット作成


この表では、世界最速級のスーパーコンピュータである El Capitan、TOP500 全体、最新のマイニング機器、そしてビットコイン・ネットワーク全体を並べています。

なお、スーパーコンピュータの性能を表す単位である FLOPS(1秒あたりに実行できる浮動小数点演算の回数)と、ビットコインのハッシュ計算を表す H/s は、目的も性質も異なります。したがって、この比較は「どちらが高性能か」を示すものではなく、ビットコイン・ネットワークを成立させている物理インフラの規模感を、馴染みのある対象と並べて把握するためのものです。

表の出典資料によれば、2025年11月時点のビットコイン・ネットワークは、最新の高性能ASICシステムで換算した場合、次のような規模に達しているとされています。

  • ハッシュレート:約1,100EH/s(1秒あたり約11垓回のハッシュ計算)

  • 専用機材:約280万台のASIC

  • 消費電力:約20.9GW(大型発電所数十基分に相当)

  • 設備コスト:約230億ドル

これらの数値は、ハッシュレートが単なるネットワーク上の数値ではなく、その裏側に膨大な専用機材、継続的な電力供給、そして大規模な設備投資が存在していることを示しています。

ビットコインの台帳は、ただデータとして保存されているだけではありません。その記録を新しく積み重ね続けるために、これだけの専用機材・電力・設備投資が、現在進行形で世界中に展開されています。

生産コストから見る、ネットワークを支える経済的負担

ハッシュレートが、ビットコイン・ネットワーク全体の計算能力を「ハッシュ/秒」という技術的な単位で示すのに対し、生産コストは、その計算能力を維持するために必要な電力・機材・設備投資などを、金銭的な尺度で捉えたものです。

【図1:ビットコイン価格と生産コストの推移】

図1. ローソク足はビットコイン価格(BTCUSD)、オレンジ線は機材・電力・人件費・資本コストなどを総合した生産コスト(Production Cost)、赤線は電力コストのみを抜き出した電力コスト(Electrical Cost)を表します。本図は2026年5月27日に取得したものであり、Capriole Investments のデータは約3週間遅れで反映されます。

出所:Capriole Investments『Bitcoin Production Cost』


生産コストには、電力代だけでなく、機材の購入や減価償却、人件費、設備の運用・維持にかかる費用、資本コストなどが総合的に含まれています。一方、電力コストは、そのうち電力コストのみを抜き出したものです。

図中の生産コストは、以下の水準となっています。

  • 生産コスト:1BTCあたり約5.8万ドル

マイナーは、こうした現実世界の負担を引き受けながら、ブロックを生み出し続けています。

生産コストの推移を観察することで、ビットコイン・ネットワークが、単なるデータ上の仕組みではなく、機材、電力、人件費、資本コストなどを含む現実世界の経済的負担によって支えられていることが分かります。また、その負担は一時的なものではなく、ビットコインの歴史とともに継続的に積み重ねられてきたものでもあります。

そして、この経済的負担こそが、プルーフ・オブ・ワークという仕組みを成り立たせています。ブロックを追加するための計算競争に、専用機材、電力、人件費、資本コストなどを含む現実世界のコストを結びつけることで、記録の書き換えを経済的に困難にしているのです。

そのため、ハッシュレートと生産コストは、プルーフ・オブ・ワークが現実世界のインフラと経済的負担に支えられ、長年にわたって積み上げられてきたことを確認するための、重要な観測指標と言えるでしょう。

おわりに

ビットコインの価値は、しばしば「発行上限があること」によって説明されます。もちろん、それは重要な特徴です。しかし、それだけでは、数あるデジタル資産の中で、なぜビットコインが価値あるものとして広く受け入れられてきたのかを、十分に説明することは難しいでしょう。

より本質的なのは、「誰が持っているのか」「誰から誰へ移ったのか」という所有と移転の記録が、あとから書き換えることが極めて難しい形で維持されていることです。そして、その記録は、世界中のマイナーが現実世界の経済的負担を引き受けながら、ブロックを積み上げ続けることによって支えられています。

このように見ると、ビットコインは単なる「発行上限のあるデジタル資産」ではありません。発行上限という特徴に加え、現実世界のコストによって守られる、書き換え困難な記録に支えられた資産として捉えることができます。

本稿の内容が、ビットコインの価値を考えるうえでの「ひとつの見方」となれば何よりです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

株式会社メタプラネットIR・資本戦略アソシエイト
綾城匡人


免責事項

本稿は、ビットコインおよびプルーフ・オブ・ワークの仕組みに関する一般的な理解を目的としたものであり、特定の暗号資産、金融商品または有価証券の取得・売却を勧誘または推奨するものではありません。本稿に記載されたハッシュレート、生産コスト、電力コスト、設備コストその他の数値は、一定の前提、推計方法および外部データに基づく参考情報であり、その正確性、完全性または最新性を保証するものではありません。また、これらの数値は、ビットコインの将来価格、公正価値、理論価格または市場価格の妥当性を示唆・保証するものではありません。

綾城匡人

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株式会社メタプラネット | @Metaplanet_JP IR・資本戦略アソシエイト(証券コード:3350) Associate, IR & Capital Strategy at Metaplanet Inc. (Tickers: 3350.T / $MPJPY / $MTPLF / DN3)

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