
ビットコインの「熟成度」を測る。HODLウェーブの読み方
【連載:ビットコイン・データ活用術 第9回】

ビットコインは、最後に動いてから時間が経てば経つほど「熟成」されていく資産です。オンチェーン分析において、この「熟成具合」をグラフィカルに映し出すのが、今回解説するHODLウェーブです。
一見、複雑な地層のように見えますが、読み解き方は非常にシンプルです。
1. 「暖色」は高い熱量、「寒色」は忍耐
HODLウェーブは、コインの保有期間を24時間以内から10年以上まで、20近い階層に分類しています。
暖色系(赤・オレンジ・黄)= 短期保有(若いコイン)
最近動かされたコインです。この層が大きく膨らんでいるときは、活発な売買が行なわれ、市場の熱量が高まっている局面であることを示します。
寒色系(緑・青・紫)= 長期保有(古いコイン)
半年以上、あるいは数年も動いていないコインです。この層が厚いときは、多くの投資家がじっと保有し続けている「蓄積」の傾向が強いことを示します。
前回のLTH/STH(155日の境界線)という区分けを、さらに「1週間」「1ヶ月」「1年」……と細かく刻んだものがHODLウェーブだと考えると、理解がスムーズになります。
2. なぜ「実現時価総額(Realized Cap)」版を見るのか?
Bitcoin.jpで提供しているこのチャートは、単なる「枚数」ではなく「実現時価総額」で重み付けされています。
これは、市場に投下された「経済的な価値」で計算していることを意味します。これにより、10年前のコインと昨日のコインをフラットに扱わず、今まさに市場を動かしている資金の動きをより正確に捉えることができます。
3. 市場の節目で起きる「コインの目覚め」
HODLウェーブが力を発揮するのは、市場のサイクルを見極めるときです。
歴史的に、ビットコインの価格が大きく上昇し、市場が過熱してくると、長年眠っていた「古いコイン(寒色)」が利益確定のために動き出します。すると、チャート上では寒色のエリアが押し潰されるように縮小し、代わりに暖色の波が大きく拡大していきます。
逆に、この「暖色の波」が厚みを増した後に縮小し始めると、過熱感が去り、調整局面へと移行していくサインとなります。
4. 実際にチャートを「操作」してみよう!
Bitcoin.jpのチャートでは、特定の期間帯だけに注目して表示を調整できます。
「若い波」だけに注目して表示を調整する
凡例にある「1年〜2年」以降の長期保有者のラベルをクリックして非表示にし、「24時間〜6ヶ月」の暖色エリアだけに注目してみてください。現在の山の高さが、過去のピーク局面と比べてどの程度の位置にあるかを確認してみましょう。
5. 【実践】2026年5月、市場の体温は?
チャート右上の「Zoom(Last 6-Month)」から、直近半年のダイナミックな「地層の変化」を読み解きましょう。

現状の観察:
直近6ヶ月のズームで見ると、チャートの約6割以上を緑色から水色の「長期保有層」が占めています。特に一番上の水色(10年以上)の層が極めて安定している一方で、下側の赤色やオレンジ色の層は、4月以降、目に見えて厚みを減らしていることが観察できます。
データの解釈:
これは、現在の状態が過去のピーク局面で見られたような極端な短期売買の熱量とは、やや異なる状態である可能性を示しています。
第7回・第8回で見た「短期勢の損切り」を経て、コインが再び長期保有層へ蓄積されつつある局面です。古いコインが大量に目覚めて「暖色の波」が厚みを増していないことから、現在はじっくりと「熟成」が進んでいるフェーズであると読み解くことができます。
6. おわりに
HODLウェーブは、市場の「地層」を見る指標です。「どのくらい古いコインが、どのくらい動いているのか」を視覚的に把握することができます。
MVRV Zスコアなどで価格の限界点を知る
LTH/STH 内訳で主導権の所在を知る
HODLウェーブで市場の熱量(コインの年齢構成)を捉える
この3つを組み合わせることで、オンチェーン分析の視界はぐっと広がります。カラフルな波の動きの中に、投資家の「忍耐」と「熱量」のサイクルがすべて刻まれているのです。
次回予告: 第10回は、長期間眠っていたビットコインが「いつ、どれだけ目覚めたか」に注目する「Revived Supply(復活供給量)」を解説します。古いクジラの動きから相場の転換点を探る、より実践的な手法を学びましょう。お楽しみに!
💡 編集後記
HODLウェーブを眺めていると、ビットコインという資産が数年単位で「呼吸」しているように見えてきます。赤い波が収まり、緑の地層が積み重なっていく様子は、まさにビットコインが信頼を勝ち取っていくプロセスそのもの。データの美しさに浸りながら、長期的な視点を持てるようになるのが、この指標の素晴らしいところですね。

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