ビットコイン「短期勢」は実際に動いたのか?STH-SOPRの読み方

ビットコイン「短期勢」は実際に動いたのか?STH-SOPRの読み方

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【連載:ビットコイン・データ活用術 第7回】

短期保有者SOPR(STH-SOPR)の全体像。 1.0のライン(緑の横線)を境界に、上側の緑色のスパイク(利益確定)と、下側の赤色のスパイク(損失確定)が、短期投資家の「決断」を可視化します。

前回の第6回では、短期保有者がどれくらい「含み損益」を抱えているか(STH-MVRV)を学びました。しかし、含み損を抱えていても、実際に売却や送金を行わなければ損益は確定しません。

今回ご紹介する「STH-SOPR」は、投資家たちがコインを動かした際の損益、つまり「最終的な決断の結果(=レシート)」を可視化する指標です。

1. STH-SOPRって何?

SOPRは、コインがオンチェーンで移動した際の価格(実現価格)を取得時の価格で割った指標です。Bitcoin.jpのチャートでは、短期保有者(保有155日以内)に絞ったデータを以下の色で表示しています。

  • 1.0より上(緑のスパイク):短期勢が「利益」を出して動かしている(利確)。

  • 1.0より下(赤のスパイク):短期勢が「損失」を出して動かしている(損切り)。

  • 1.0の緑の横線:損益分岐点。

前回のMVRVが「お財布の中身(含み損益)」なら、今回のSOPRは「レシートの集計(確定損益)」のようなイメージです。

2. 数値が示す“市場の分かれ目”

STH-SOPRを見る上で、最も重要なのは中央の「1.0」という緑の境界線です。

数値と色が示す「短期勢の行動・心理」のリファレンス表。 1.0の損益分岐点を境界に、投資家が利益を確定させたのか、あるいは損失を確定させたのかを判別するための目安を整理しています。

3. 強気相場と弱気相場での「1.0」の役割

この指標のポイントは、トレンドによって1.0のラインが「サポート」にも「レジスタンス」にもなる点です。

  • 強気相場の「1.0」= 押し目のサポート

  • 上昇トレンド中に価格が下がっても、短期勢は「自分の買った価格(1.0)」まで来るとコインを動かすのを止め、買い戻しが入りやすくなります。1.0付近で赤色のスパイクが止まれば、それは健全な押し目と言えます。

  • 弱気相場の「1.0」= 戻り売りのレジスタンス

  • 下落トレンドでは、含み損の人たちが「買った価格まで戻ったら逃げたい(やれやれ売り)」と考えます。一時的な反発があっても、1.0付近で緑のスパイクが伸び悩み、価格が跳ね返される抵抗線になりやすいのが特徴です。

4. 実際にチャートを「操作」してみよう!

Bitcoin.jpのチャートでは、現在の短期勢がどれほど「切羽詰まった状態か」を補助線で確認できます。

「赤色のスパイク」の深さに注目する

チャート上の水平の破線(0.98, 0.96, 0.94...)に注目してください。 赤色のスパイクが下の破線に到達するほど、短期勢が大きな損失を確定させていることを意味します。過去のデータでは、これらが深く突き刺さったタイミングが、パニック的な売りのピーク(短期的な底打ち)となる傾向があります。

5. 【実践】2026年4月、短期勢は「動いて」いるか?

チャート右上の「Zoom(Recent History)」から、2026年4月現在の市場のリアリティを読み解きましょう。

2026年4月現在の拡大図。 緑色のライン(1.0)を下回り、0.98や0.96といった灰色の破線付近まで赤色のスパイクが深く伸びています。短期勢がまとまった損失を確定させている様子が鮮明に現れています。

現状の観察: 2026年に入ってから、1.0のラインの下側に鋭い赤色のスパイクが連続して発生していたことがわかります。数値が0.96〜0.98付近まで深く沈んでおり、まとまった損切りが行われた形跡が鮮明です。しかし、超直近のデータに目を向けると、小さな緑色のスパイクが1.0の上に現れています。

データの解釈: 一連の深い赤色のスパイクは、前回のMVRVで見た「含み損に耐えられなくなった層」による損失確定(投げ売り)を表しています。これによって需給の整理(ポジションの入れ替わり)が相当数進んだと考えられます。

そして、足元で緑色のスパイクが出現し始めたことは、パニック的な売りが一旦収まり、現在の価格帯で動いている参加者がようやく「利益(または取得コスト付近)」で決済できるまで、相場が落ち着きを取り戻しつつある兆候と読み解くことができます。ここから緑のスパイクが持続的に現れるかどうかが、相場の安定を見極めるポイントになります。

6. ⚠️ STH-SOPRを活用する際の注意点

  • SOPRは「決断の後」に出る:コインが移動した後に確定するデータのため、リアルタイムの価格変動よりも一瞬遅れて反応する性質があります。

  • 大きな流れを見失わない:市場全体のMVRV(第4回)などで、今が歴史的に見て「高いのか・低いのか」という大きな地図を持った上で、このSOPRで足元の心理(行動)を確認しましょう。

7. おわりに

STH-SOPRは、投資家の「心理(含み損益)」が「行動(売却・送金)」に変わった瞬間を捉える指標です。

  1. STH-MVRVで、彼らがどれくらい「耐えているか(含み損)」を見る

  2. STH-SOPRで、彼らが実際に「決断したか(損失確定)」を確認する

この2段階のチェックを習慣にすることで、調整相場の最中でも「今は需給の整理が進んでいる最中なんだ」と、冷静にチャートを見守る視点が養われます。

次回予告:

第8回は、いよいよ市場の主役交代を読み解きます。全供給量のうち、ガチホ勢と短期勢のどちらが主導権を握っているかを可視化する「LTH/STH 内訳」を解説します。お楽しみに!

💡 編集後記

「含み損」と「損失確定」は似ているようで、市場に与えるインパクトは全く違います。誰かが損失を確定したということは、そのコインが誰か他の人の手に渡り、新しいコストベースが作られたということ。オンチェーンデータは、こうして市場が新陳代謝を繰り返す様子を、誠実に描き出しています。

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