
ビットコイン保有者の収益状況を測る:含み益の供給量(Supply in Profit)
【連載:ビットコイン・データ活用術 第5回】

ビットコインが上昇している時、「周りの人はどれくらい儲かっているんだろう?」と気になることはありませんか? 逆に下落している時、「みんな、そろそろ投げ売りしたくなるほど含み損なのかな?」と考えることもあるでしょう。
そんな投資家たちの「お財布事情」と「心理状態」を、データで可視化するのが、今回ご紹介する「含み益状態の供給量(割合)」です。
1. 「含み益状態の供給量」って何?
この指標は、全発行枚数のうち、「現在の市場価格よりも低い価格で最後に動いた(=売買や送金などで最後に取引された)」コインが何%あるかを示したものです。
割合が高い:多くの人が利益を抱えている状態。
割合が低い:多くの人が含み損を抱えている状態。
「市場の何割の人がハッピーな状態か」という視点を持つことで、価格だけでは見えない「売り圧力」や「反発の兆し」を推測する手がかりになります。
2. 数値が示す“市場の心理状態”
チャート内のパーセンテージ(%)を目安に、市場がどのような心理状態にあることが多いのか整理しましょう。

3. 過去のデータから見る「絶望と歓喜」のサイクル
この指標の興味深い点は、過去のビットコインの「天井」と「底」において、極めて極端な数値を示してきたことです。

過去の下落局面(2015年、2019年、2022年)では、含み益の割合が50%付近まで沈み込みました。これは「2人に1人が含み損」という非常に苦しい状況です。こうした「総悲観」のタイミングは、歴史的には古い保有者から新しい保有者へコインが渡り、長期的な土台が再構築される局面となってきました。
4. 実際にチャートを「操作」してみよう!
Bitcoin.jpのチャート画面では、過去の平均と比較するための便利な補助線を表示できます。
平均的な水準からの「ズレ」をチェックする
画面上部のボタンから、以下の点線に注目してみましょう。
青い点線(平均値):歴史的に見て中間的な水準(おおよそ75%前後)。
赤い点線(+1.0σ):過去と比べて「かなり多くの人が利益状態にある」水準。
緑の点線(-1.0σ):過去と比べて「かなり多くの人が損失状態にある」水準。
※σ(シグマ)は「どれくらい平均から離れているか」を示す統計的な目安です。
現在のオレンジ色の線が、これらの点線に対してどこにあるかを見るのがポイントです。
5. 【実践】2026年4月現在、市場の「幸福度」は?
最新のチャート(2026年4月17日現在)で、現在の立ち位置を確認してみましょう。

現状の観察:
現在、含み益の供給量は60%付近を推移しています。これは青い点線(中間的な水準)を明確に下回り、緑の点線(-1.0σ)に近い水準です。
データの解釈:
全コインのうち、約4割が「含み損」の状態にあることを意味します。2021年のピーク時(ほぼ100%が含み益)と比較すると、過熱感は大きく後退し、「平均を下回る、やや弱気寄りの状態」にあると解釈することができます。市場参加者の収益状況が悪化しているこの局面は、保有主体が入れ替わる「再構築」の過程である可能性を示唆しています。
6. ⚠️ この指標を活用する際の注意点
「含み益の供給量」は市場の心理を知る強力なツールですが、以下の点に注意が必要です。
単独で判断しない:これだけで売買を決めるのではなく、前回学んだ「MVRV Zスコア」など他の指標と組み合わせることが大切です。
強気相場での停滞:非常に強い上昇トレンドの最中には、90%以上の高い水準が数ヶ月以上続くこともあります。
7. おわりに
「含み益状態の供給量」は、市場に溢れる期待や恐怖を一旦脇に置き、「投資家たちの真の収益状況」という動かしようのない事実を教えてくれます。
MVRV Zスコアで「価格の離れ具合」を確認
含み益の供給量で「みんなの収益状況」を把握
これらを判断材料のひとつとして活用することで、相場に呑まれない多面的な視点を持つことができるようになります。
次回予告:
第6回は、今回学んだ考え方を応用し、「最近買ったばかりの人」の心理にフォーカスする「STH-MVRV」を解説します。短期的な相場の反転を捉えるヒントが詰まった指標です。お楽しみに!
💡 編集後記
含み益が100%に近づくほど、人は「もっと上がる」と信じたくなりますが、データは「全員がハッピーな時こそ慎重に」と教えてくれます。逆に、今の2026年4月のように多くの人が苦しんでいる時こそ、歴史的な転換点として観測されてきた局面と重なることがあります。数字は常に、私たちの感情の逆を映し出す鏡のような存在です。



