Liquid Bitcoin (L-BTC) と Wrapped Bitcoin (WBTC) の違いとは?派生銘柄のリスクと信頼モデルを比較解説

Liquid Bitcoin (L-BTC) と Wrapped Bitcoin (WBTC) の違いとは?派生銘柄のリスクと信頼モデルを比較解説

Bitcoin Japan
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拡張性と「信頼の最小化」のジレンマ

ビットコインのメインチェーン(レイヤー1)は、分散性とセキュリティを最優先に設計されています。そのため、決済の即時性や複雑なスマートコントラクトの実行には、あえて制限を設けています。この制限を補完するために登場したのが、ビットコインを別のネットワーク上で流通させる「L-BTC(Liquid Bitcoin)」や「WBTC(Wrapped Bitcoin)」といった派生銘柄です。

これらは主に、取引所間の高速決済や機密性を重視するプロのトレーダー、あるいはリスクを承知でアルトコインの流動性プールにビットコインの購買力を持ち込もうとする層に向けた「利便性重視の選択肢」と言えます。

Liquid Bitcoin (L-BTC):ビットコインの機能を拡張するサイドチェーン

Liquid Networkは、ビットコインのメインチェーンと双方向のペグ機能を持つサイドチェーンです。ここで発行されるL-BTCは、ビットコインをより速く、機密性を保ったまま送金するために利用されます。

ビットコインのメインチェーンとは独立したブロックチェーンを構築することで、処理能力の向上と同時に、Confidential Transactions(機密トランザクション)による送金額の隠匿を実現しました。これにより、取引所間での大口決済や迅速な裁定取引(アービトラージ)を、メインチェーンの混雑やプライバシーリスクを避けつつ実行する環境を提供しています。

フェデレーションによる管理

L-BTCの最大の特徴は、特定の企業ではなく「フェデレーション(加盟組織の連合)」によってネットワークが運営されている点です。Liquidでは、ブロック生成およびペグ管理が、複数のfunctionaryで構成されるフェデレーションにより担われています。ビットコインとのペグはマルチシグ(例:11-of-15)で運用され、単一企業によるカストディとは異なる分散が設計されています。

その一方で、BitcoinメインチェーンのPoW合意とは異なり、許可制のfunctionaryとマルチシグに基づく「信頼された複数の実体」に依存するという、別種の信頼前提が追加されます。

Wrapped Bitcoin (WBTC):アルトコインのエコシステムへの架け橋

WBTCは、イーサリアムなどのアルトコイン・ネットワーク上でビットコインを扱うためのトークンです。ビットコインを担保に、いわゆる「DeFi(分散型金融)」での貸付や運用を目的として利用されます。

技術的にはERC-20規格のトークンとして発行されており、その実体はビットコインそのものではなく、特定組織に対する「ビットコインの引き出し請求権」に過ぎません。その利便性と引き換えに、イーサリアムのスマートコントラクトの脆弱性や、ネットワーク自体のルール変更といった、ビットコインには存在しない固有のプラットフォーム・リスクを二重に抱えることになります。

カストディ(保管)のリスク

WBTCの仕組みは、L-BTCと比べても中央集権的な要素が強い設計です。ユーザーがビットコインを預ける先は特定の保管業者(カストディアン)であり、その預け入れを裏付けとして同額のWBTCが発行されます。構造的には、ユーザーはビットコインそのものではなく、保管業者に対する「償還請求権」を保有している状態にあります。

保管業者側で破綻、不正、ハッキング等の重大なインシデントが発生した場合、WBTCの償還可能性に疑義が生じ、市場価格がBTCから大きく乖離したり、流動性が急減するリスクがあります。また、WBTCはスマートコントラクト上で運用されるため、コントラクトの設計不備や基盤チェーンの仕様変更といった、ビットコインには存在しない追加的なプラットフォーム・リスクも内包します。

さらに、基盤となるネットワークのコンセンサス設計や規制環境次第では、検閲や凍結といった措置が技術的・制度的に実行可能となる余地もあり、ビットコインのメインチェーンとは異なるリスク構造を持っています。

セキュリティの観点から見た比較

これら二つを比較する際に重要なのは、「どこに信頼境界が存在するのか」という点です。

Liquidは「複数主体による連合型の信頼」、WBTCは「特定カストディ主体への信頼」と整理できます。どちらもメインチェーンのPoWによる無許可型合意とは異なる前提を持っています。

まとめ:信頼境界を理解する

L-BTCやWBTCは、ビットコインの流動性や機能性を拡張する実用的なツールです。しかし、それらはメインチェーン上のビットコインと同一の信頼前提に基づく資産ではありません。

ビットコインの本質は、「自分の鍵で管理し、自分のノードで検証できる」という検証可能性にあります。L-BTCやWBTCを利用する場合、その検証可能性の一部を、フェデレーションやカストディアン、あるいは別のコンセンサス設計に委ねることになります。

利便性や利回りだけで判断するのではなく、「自分はどの信頼境界の内側にいるのか」を理解した上で選択すべきでしょう。ビットコイン・スタンダードとは、利便性を否定することではなく、信頼構造を自覚的に選ぶ姿勢に他なりません。

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