ビットコインETF総まとめ:仕組み・種類・直接保有との違いを徹底解説

ビットコインETF総まとめ:仕組み・種類・直接保有との違いを徹底解説

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ETFという投資商品を理解する

ETF(Exchange-Traded Fund、上場投資信託)は、株式や指数、コモディティなど、特定の資産の値動きに連動するよう設計された金融商品のことです。投資信託と仕組みそのものは似ていますが、証券取引所に上場しており、株式と同じように市場の取引時間中であればいつでも売買できる点が大きな特徴になります。

ETFを購入するということは、そのETFが保有している複数の資産をまとめた「バスケット」を間接的に所有することを意味します。例えば、日経225に連動するETFを購入した場合には、日経平均株価を構成する225銘柄全体に分散投資しているのと同じ効果が得られます。個別銘柄を一つずつ選ばなくても、ひとつのETFを通じて幅広い市場へアクセスできるため、投資経験の浅い方でも取り組みやすい点が魅力です。

従来型の投資信託と比較すると、ETFにはいくつかの性質があります。市場が開いている時間帯であればリアルタイムで売買できるため、基準価額が一日に一度しか更新されない投資信託とは異なり、市場の変動に応じて柔軟に取引できます。また、一般的に経費率が低く抑えられているため、長期にわたり運用する場合のコスト面で有利になることがあります。さらに、分配金が頻繁に発生しない商品も多く、再投資を前提とした運用を行ないたい投資家にとっては、税務上の扱いも含めて効率的に資産形成を進められるという側面があります。

ETFの大きな魅力は、少ない手間で分散投資が実現できる点にあります。個別株を細かく選定しなくても、特定の指数やテーマに沿ったETFをひとつ購入するだけで、多数の銘柄や資産クラスにまとめて投資することができます。投資初心者が学びながら市場全体にアクセスする手段としても活用されますし、既に経験を持つ中級者にとっても、効率よくポートフォリオを構築する方法として広く利用されています。



ビットコインETFの基本的な仕組み

ビットコインETFは、ビットコインそのものを直接購入しなくても、価格の値動きに連動して投資ができるように設計された金融商品です。投資家は暗号資産取引所を利用してビットコインを取得する代わりに、従来の証券口座を通じてETFの株式を売買します。これにより、株式や投資信託と同じ感覚でビットコインの価格変動へアクセスできる点が特徴になっています。

投資家がビットコインETFを購入すると、ETFを運用する会社は、その購入額に応じて実際のビットコインを市場で取得し、安全な場所で保管します。ETFの価格は、運用会社が保有しているビットコインの価値や、市場全体の需給によって決まります。投資家がETFを売却する際には、このプロセスが逆方向に働き、必要に応じてビットコインが売却されることで価格が調整されます。

この仕組みを利用することで、投資家は暗号資産特有の管理作業から解放されます。例えば、ウォレットを設定したり、秘密鍵を誤って紛失しないよう保管したり、サイバー攻撃のリスクに備えたりする必要がありません。従来の金融商品と同じ仕組みの中でビットコインに投資できることは、初心者にとってだけでなく、すでに金融商品に慣れている投資家にとっても扱いやすさにつながっています。

ビットコインETFは、個人投資家だけではなく機関投資家にとっても重要な存在です。年金基金や保険会社のように、規制上の理由からビットコインを直接保有できない組織でも、ETFであれば投資対象として検討できる可能性があります。こうした金融機関は厳格な内部ルールに基づいて資産を運用することが求められるため、証券取引所に上場し、監督下にあるETFの形式はアクセスしやすい仕組みとなっています。

このように、ビットコインETFはビットコインという新しい資産クラスを、既存の金融インフラの中で扱いやすくするための重要な橋渡し役を果たしています。


ビットコインETFの種類と特徴

ビットコインETFには複数の種類があり、運用の仕組みによって特徴が大きく異なります。代表的なものとして、現物型(スポット)ETFと先物型ETFがあり、それぞれが異なる投資特性を持っています。どのETFを選ぶかによってリスクの種類や価格の動き方が変わるため、仕組みを理解したうえで選択することが重要になります。

現物型(スポット)ビットコインETF

現物型のビットコインETFは、運用会社が実際にビットコインを購入し、専門の保管機関であるカストディアンを通じて管理する仕組みになっています。投資家がETFを購入すると、その裏付けとして運用会社は相当額のビットコインを保有し、ETFの価格はそのビットコインの価値を基準に形成されます。

2024年1月10日には米国で現物型ETFがまとめて承認され、ブラックロックやフィデリティ、アーク・インベストなどの大手金融機関が運用を開始したことで、世界的に注目されました。

現物型ETFは先物契約を使わないため、ビットコインの現物価格に比較的忠実に連動しやすい点が特徴です。価格が上昇した際にはその値動きをETFが反映しやすく、ビットコインの値動きそのものにアクセスしたい投資家にとって扱いやすい仕組みといえます。

一方で、実際のビットコインを大量に保有するという性質から、その保管方法や管理体制については後半で触れるリスクの議論とも密接に関わってきます。こうした構造的な性質は、現物型ETFを理解するうえで念頭に置いておく必要があります。

先物型ビットコインETF

先物型のビットコインETFは、ビットコインの現物を保有するのではなく、将来の特定時点に特定価格でビットコインを売買することを契約した先物取引を利用して運用されます。米国では2021年10月に ProShares Bitcoin Strategy ETF(BITO)が承認され、これが初めてのビットコイン先物ETFとして大きな話題を呼びました。

先物型ETFは、既存の先物市場の仕組みを利用するため、金融規制の枠組みに乗せやすいという利点があります。また、市場の流動性が高く、大口の売買に対応しやすい点も特徴です。

ただし、先物契約には期限があり、期限が到来すると新しい契約に乗り換えるロールオーバーが必要になります。その際に追加のコストが発生することがあり、長期的に保有した場合にはコスト面で不利になる可能性があります。さらに、現物のビットコイン価格と先物価格の間で差が生じることがあるため、必ずしもビットコインの値動きを正確に反映するわけではありません。

その他のビットコイン関連ETF

ビットコイン価格そのものに連動するETF以外にも、ビットコイン関連企業やビットコインを取り巻くビジネスに投資するETFがあります。

代表的なものとして、ビットコインマイニング企業の株式をまとめて組み入れたETFがあります。マイニング企業はビットコインの価格変動と収益性が関わりやすい性質があるため、エコシステム全体に間接的に投資する方法として利用されています。

また、価格の動きに応じて利益を狙うロング型やショート型のETFも存在し、デリバティブや先物契約を利用してレバレッジをかける場合もあります。こうしたETFは価格変動を積極的に活用したい投資家に向いていますが、値動きが大きくなる分、リスクも高くなる傾向があるため、商品ごとの構造を理解して利用する必要があります。

ビットコインETFは、このように種類ごとに特徴やリスクが大きく異なります。それぞれの仕組みを理解し、自分の投資方針やリスク許容度に合ったタイプを選ぶことが重要です。


ETFと直接保有の決定的な違い

ビットコインETFとビットコインの直接保有には、本質的な違いがあります。両者の仕組みや扱いを正しく理解することは、どのような方法でビットコインに投資するかを判断する際の重要な基準になります。ここでは所有権、コスト、取引環境、実用性といった観点から比較していきます。

所有権と管理の違い

ビットコインETFを購入しても、投資家が直接ビットコインを所有するわけではありません。投資家が保有するのはETFの株式であり、その裏側で実際のビットコインを管理しているのはETF運用会社とカストディアンです。投資家からみると、証券会社、ETF運用会社、カストディアンが関わる多層的な構造になっており、資産の管理はあくまで第三者に委ねられています。

これに対して、ビットコインを直接保有する場合には、秘密鍵を自分で管理することで完全な所有権を持つことができます。秘密鍵の管理を誤らない限り、他者の許可を必要とせず、自分の判断でいつでも送金や利用ができます。これはビットコインが持つ「信頼を必要としない仕組み」という理念に沿った特徴であり、自己主権的な資産管理を重視する人にとって大きな意味を持ちます。

コスト構造の違い

ETFには年間経費率が設定されており、運用会社の管理費用として保有資産から差し引かれます。米国で提供されている現物型ビットコインETFの場合、経費率はおおむね0.2パーセントから1.5パーセント程度で推移しています。短期間では小さく見える数字でも、長期間保有を続けると複利的に積み上がり、最終的な投資リターンに影響を与える可能性があります。

直接保有の場合は異なるコスト構造になります。購入時の取引手数料は必要ですが、自己管理を選択する場合には保管コストはほとんど発生しません。ハードウェアウォレットを利用する場合でも、初期費用として一万円から三万円程度で済むことが多く、その後の維持コストはほぼゼロです。取引所に保管する場合でも、多くの国内取引所では保管手数料が無料となっています。

取引時間と流動性

ETFは上場している証券取引所の取引時間内でしか売買することができません。日本の証券取引所の場合、平日の午前九時から午後三時までが取引時間であり、昼休みや休日には取引が停止します。そのため、急な価格変動に対して即座に売買することが難しい場合があります。

一方、ビットコインは24時間365日取引が行なわれており、深夜や週末でも売買が可能です。世界中の取引所が常に稼働しているため、国際市場の動きに合わせて柔軟に対応できる点は、直接保有ならではの特徴です。

利用可能性と実用性

ETFの株式は投資商品としての機能に限定され、売却して現金化する以外の用途はありません。配当が支払われるタイプも一般的ではなく、日常の支払いに使うこともできません。

これに対して、実際のビットコインは決済手段として利用でき、国内外の対応店舗やオンラインサービスで支払いに使うことができます。また、国境を越えた送金を短時間で行なうことができ、銀行を介さずに資金を移動できる点は大きな特徴です。将来的にビットコインの決済インフラがさらに整備されれば、実用性はより高まることが期待されています。

ビットコインETFと直接保有の違いは、このように所有権、コスト、流動性、実用面など多岐にわたります。どちらが適しているかは投資家の目的や重視するポイントによって変わるため、両者の特徴を理解した上で選択することが大切です。


ETF承認がもたらす市場への影響

ビットコインETFの承認は、暗号資産市場に大きな変化をもたらします。とくに米国で2024年1月に現物型ビットコインETFが承認されたことは、資金流入や市場構造に実際の影響を与えた具体例として重要です。ここでは、米国の事例を手がかりに主な変化を整理します。

機関投資家の参入促進

現物型ビットコインETFの上場後、ビットコインに直接投資できなかった機関投資家が市場に参加しやすくなりました。規制や内部ルールの制約が厳しい年金基金、保険会社、企業年金などが、ETFという既存の金融インフラを通じてビットコインへのエクスポージャーを確保できるようになったためです。

米国では、承認後の数か月で大手ETFに数百億ドル規模の資金が流入し、運用残高が急速に拡大しました。ブラックロックのIBITやフィデリティのFBTCを中心に、ETF経由の資金流入がビットコイン市場全体の需要を押し上げたと分析されています。こうした資金流入は、価格形成の面でも一定の影響を与えたとみられています。

市場の成熟と安定化

ETFを通じた投資が増えることで、市場の流動性が向上し、価格の極端な変動が抑えられる可能性があります。大口の売買がETFを通じて吸収されやすくなることで、市場全体の安定性が高まり、ビットコインがより成熟した金融資産として扱われる土台が整うという見方もあります。

一方で、ビットコインETFが株式市場と同じ金融インフラ上で運用されることで、伝統的な金融市場との相関が高まる懸念も指摘されています。株式市場が下落した場面でETFを通じてビットコインが売られると、ビットコイン本来の独立した値動きが弱まり、他のリスク資産と似た動きを示す可能性があります。こうした相関の変化は、今後の市場分析の重要なポイントになります。

規制環境の整備

ETFの承認は、規制当局がビットコインを金融資産として認め、監督下で取り扱う枠組みを整えることを意味します。米国では現物型ETFの承認によって、ビットコイン市場の透明性向上や投資家保護の議論が進み、暗号資産に対する制度的な扱いが一段階進んだと評価されています。

日本でも、ビットコインETFの承認に関する議論が続いています。金融庁は慎重な姿勢を維持しているものの、米国での成功事例を受けて制度設計を検討する動きが始まっています。暗号資産の税制改革と合わせて、ETF解禁に向けた議論が今後進む可能性があり、国内市場にとって重要なテーマとなっています。

現在のところ、日本ではビットコインETFの上場はまだ実現していませんが、海外での動きは国内の制度議論にも影響を与えており、投資家にとっても将来的な選択肢の拡大を示す流れとして注目されています。


ビットコインETFのリスクと課題

ビットコインETFは、ビットコインを直接保有せずに価格に投資できる便利な仕組みですが、その裏側にはいくつかの重要なリスクや構造的な課題が存在します。ETFを検討する際には、こうした側面も理解しておく必要があります。

カウンターパーティリスク

ビットコインETFは複数の仲介者が関与する金融商品であり、投資家はその仕組みのどこかに問題が生じた場合に影響を受ける可能性があります。ETF運用会社が経営上の問題を抱えた場合や、実際のビットコインを保管するカストディアンがセキュリティ上の侵害を受けた場合、さらに証券会社のシステム障害などが発生した場合には、ETFの取引や資産管理に支障が出ることがあります。

2022年に起きたFTXの破綻では、多くの投資家が第三者への依存の大きさを痛感しました。ETFは厳しい規制下で運用されているため、暗号資産取引所の破綻とは状況が異なりますが、「自分以外の管理主体に資産を預ける」という構造が持つリスクが完全に消えるわけではありません。この点は、直接保有とは根本的に異なる性質といえます。

ペーパービットコインの増加

ETFの株式は、投資家がビットコインそのものを保有しているわけではなく、ビットコインの価値に連動する“金融商品の請求権”に過ぎません。理論的には、ETF市場で取引される株式が、裏付けとなるビットコインの供給量を上回る可能性があります。このような仕組みは一般に「ペーパービットコイン」と呼ばれます。

金(ゴールド)の市場では、現物の供給量を大きく超える金融商品が存在し、しばしば価格発見メカニズムに影響を与えてきました。ビットコイン市場においても、同様の現象が拡大すれば、ビットコインの希少性や市場価格の透明性にゆがみが生じる懸念があります。特に長期的な投資家にとっては、実際の供給量との乖離がどの程度発生しているのかを注視する必要があります。

中央集権化の懸念

現物型ETFを通じて大量のビットコインが特定のカストディアンに集中すると、ネットワーク全体の分散性が損なわれる可能性があります。ビットコインは分散型ネットワークを前提とした仕組みですが、保管主体が少数に集中することで、特定の企業がネットワークの議論やフォーク(分岐)に影響を与える余地が生じます。

また、大量のビットコインが金融機関に集中して保管されることで、政府によるアクセス制限や資産凍結のリスクが増す可能性があります。カストディアンは法的命令に従う義務があり、政治的・規制的な理由で投資家がビットコインへアクセスできなくなる状況が完全に排除されるわけではありません。

ビットコインETFは、ビットコインにアクセスする手段として重要な役割を果たしますが、同時にこうした構造的なリスクも持ち合わせています。直接保有とETFのどちらを選ぶかを判断する際には、利便性とリスクの両面を比較し、自分がどの程度の管理権限や自律性を求めるのかを考えることが大切です。

投資判断のポイント:ETFか直接保有か

ビットコインに投資する方法として、ETFを利用する場合と、ビットコインを直接保有する場合には、それぞれ異なる特徴があります。どちらが適しているかは、投資家の状況や目的、リスクの考え方によって変わります。ここでは判断の際に役立つ視点を整理していきます。

ETFが適している投資家

証券会社の口座をすでに持っており、株式や投資信託といった従来型の金融商品に慣れている方にとって、ETFは取り組みやすい手段です。暗号資産特有の技術的な知識がなくても投資することができ、税務処理も比較的シンプルに行なうことができます。

また、機関投資家や企業の中には、規制や内部ルールによりビットコインを直接保有できないケースがあります。こうした組織にとって、上場金融商品として取り扱われるETFは、ビットコインの価格にアクセスするための実質的な選択肢となります。

ビットコインの技術的な背景や理念にあまり関心がなく、価格変動による値上がり益だけをシンプルに取りに行きたい場合には、ETFの手軽さがメリットになることがあります。日々の管理を最小限に抑えながら投資したい方にも向いています。

直接保有が適している投資家

ビットコインの仕組みや価値に理解があり、長期的な保有を前提にしている方には、直接保有の方法が適しています。秘密鍵を自分で管理することにより、資産の完全な所有権を持つことができるため、「自分自身が資産の管理者である」というビットコイン本来の性質を活かすことができます。

将来的にビットコインを決済に利用する可能性がある場合や、海外への送金を頻繁に行なう場合にも、直接保有の利点が発揮されます。暗号資産の管理を自分で行ないたいという技術的な興味や、セキュリティについて学ぶ意欲がある方にとっては、直接保有の経験が資産管理の理解を深めるきっかけにもなります。

また、コストの観点から見ると、長期保有では直接保有が有利になる場合があります。ETFには年間経費率がかかりますが、直接保有の場合は購入時の手数料以外のコストがほとんど発生しません。ハードウェアウォレットを利用する場合でも、基本的な費用は初期投資の範囲に収まります。

ハイブリッドアプローチ

ETFと直接保有を組み合わせる方法もあります。流動性を重視したい部分や売却のタイミングを柔軟にしたい部分をETFで保有し、長期的に保持したい部分を自分で管理するという使い分けです。このように分けることで、それぞれの方法のメリットを同時に活かすことができます。

例えば、退職金など長期の資産運用の一部をETFで行ないつつ、個人のポートフォリオの一部を直接保有にすることで、将来的な決済利用や送金の利便性に備えることもできます。投資目的が複数ある場合には、こうした組み合わせが選択肢となります。

このように、ETFと直接保有にはそれぞれ異なる特徴があります。どちらか一方を選ぶ必要はなく、自分の目的やリスク許容度に合わせて選択することが大切です。


セルフカストディの重要性と実践方法

ビットコインを直接保有する場合には、セルフカストディ(自己管理)の知識が欠かせません。ビットコインは第三者に依存しない資産であり、自分自身で管理することで、銀行口座や証券口座では得られない高い自律性を手に入れることができます。適切な方法を理解すれば、安全性を確保しながら長期保有を行なうことができます。

ハードウェアウォレットの活用

セルフカストディの中心となる手段がハードウェアウォレットです。LedgerやTrezorなどの専用デバイスを使うことで、秘密鍵をインターネットから切り離して管理することができます。オンライン環境に接続されないため、ハッキングリスクを大幅に抑えられる点が特徴です。

初期設定の際には、二十四個の単語からなるシードフレーズが表示されます。このシードフレーズは資産の復元に必要な情報であり、紙に書き写して安全な場所に保管します。複数の場所に分散して保管することで、災害や盗難などへの備えにもなります。デバイスが故障しても、シードフレーズがあれば資産を復元することができます。

マルチシグの活用

さらに高い安全性を求める場合には、マルチシグ(マルチシグネチャー)という仕組みを利用する方法があります。複数の秘密鍵のうち、あらかじめ決められた数以上の署名がそろわなければ送金できない仕組みであり、一つの鍵に問題が発生しても資産が失われることを防ぐことができます。

例えば、三つの鍵のうち二つの署名が必要な「2-of-3」の設定にすることで、一つの鍵を紛失した場合でもアクセスが可能でありながら、セキュリティ面での強度を保つことができます。組織的な管理や大きな保有量を扱う場合には、こうしたマルチシグの活用が特に有効です。

取引所の選択と利用方法

セルフカストディが難しい場合には、信頼できる取引所を利用する選択肢もあります。日本では金融庁に登録された取引所のみが営業を認められており、一定の基準に沿って資産管理が行なわれています。利用する際には必ず二段階認証を設定し、アカウントの安全性を高めることが重要です。

ただし、取引所に資産を長期間預け続けることは推奨されません。取引所は売買のための場所であり、資産を保管するための場所ではないという点を理解しておく必要があります。必要なときだけ一時的に資産を預け、基本的には自分で管理する方法を選ぶことが安全性の向上につながります。

セルフカストディは難しく感じるかもしれませんが、手順を理解すれば誰でも実践できる方法です。長期的にビットコインを保有する場合には、自分自身で資産を管理するという選択肢が、資産の保全と自由度を高める重要な手段となります。


まとめ:ビットコインETFの位置づけと将来展望

ビットコインETFは、伝統的な金融の仕組みとビットコインを結びつける新しい投資手段として位置づけられています。証券口座から取引できることにより、多くの投資家がこれまでよりも容易にビットコインへアクセスできるようになり、市場の裾野を広げる役割を果たしています。

一方で、ビットコインETFはビットコインそのものが持つすべての特性を提供するわけではありません。分散型の仕組みや検閲耐性、自己主権的な資産管理といったビットコインの核心となる価値は、直接保有によってのみ完全に享受できるものです。ETFはあくまで「価格へのアクセス手段」であり、ビットコインの本質まで置き換えるものではない点に注意が必要です。

日本でもETFの承認が期待されていますが、制度が整うまでの間に、ビットコインの仕組みや理念について理解を深めておくことが重要です。ETFが登場したとしても、その背景となる技術や設計思想を理解していなければ、投資判断に必要な視点を十分に持つことができません。

将来的には、ビットコインETFと直接保有が併存し、それぞれの特徴を活かしながら利用される投資環境が整っていくと考えられます。投資目的やリスク許容度に応じて手段を選択し、必要に応じて組み合わせることが現実的なアプローチになるでしょう。

ビットコインは単なる投資対象ではなく、新しい金融システムの可能性を持つ技術です。ETFを入口として関心を持った後に、ビットコインの仕組みや意義について学び、自分のペースで理解を深めていくことが、長期的な視点から見ても有益な一歩となります。

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