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市場の「資金の厚み」を測る。未決済建玉(OI)の読み方

市場の「資金の厚み」を測る。未決済建玉(OI)の読み方

Bitcoin Japan
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【連載:ビットコイン・データ活用術 第12回】

ビットコイン先物 未決済建玉[日本円]の全体像。 各主要取引所の建玉(決済されずに残っている契約残高)を積み上げグラフで表示しています。2021年の過去のピーク時と比較して、現在の市場規模(日本円換算の総額)が大きく拡大していることが観察できます。

前回第11回では、先物トレーダーたちの「前のめり感」を測るファンディングレート(資金調達率)を学びました。

しかし、どれだけ市場参加者の取引が活発でも、取引されている「お金の総量」が少なければ、市場全体への影響は限定的です。そこでセットで確認したいのが、市場に溜まっているレバレッジ資金の「厚み」を教えてくれる「未決済建玉(オープンインタレスト:OI)」です。

1. 未決済建玉(OI)とは何か?

未決済建玉(オープンインタレスト)とは、先物市場において「買い手と売り手の間で成立した契約のうち、まだ決済されずに残っている残高の総額」のことです。

  • 建玉が増えているとき:市場に新しい資金が流入し、新規のポジション(ロングまたはショート)が活発に構築されている状態。

  • 建玉が減っているとき:トレーダーたちが利益確定や損切りを行い、ポジションを閉じて資金を回収している状態。

簡単に言えば、「今、ビットコインの先物市場にどれだけのお金が滞留しているか」を示す、市場の体力を表す指標です。

2. なぜ「建玉の増減」を監視するのか?

建玉それ自体は、価格が「上がるか・下がるか」を予測するものではありません。しかし、「次に発生する価格変動の影響度(インパクト)」を測る強力なヒントになります。

  1. ポジション量の蓄積
    価格が一定の範囲(レンジ)で横ばいに推移しているにもかかわらず、建玉だけが右肩上がりに増えている局面があります。これは、市場参加者が次の値動きに備えてポジションを積み上げている状態と言えます。

  2. 急変動(スクイーズ)の警戒
    建玉が歴史的な高水準に達しているときは、それだけ多くのレバレッジポジションが市場に残っていることを意味します。この状態で価格がどちらか一方に動き出すと、大量の強制ロスカットを巻き込んだ急激な変動(スクイーズ)が発生しやすくなります。

3. 取引所ごとの「色」で市場構造の変化が見える

Bitcoin.jpのこのチャートの最大の強みは、どの取引所にどれだけの建玉があるかを色分けして確認できる点です。

  • オレンジ色(CME:シカゴマーカンタイル取引所)
    米国の伝統的な大口機関投資家やヘッジファンドが中心の取引所です。

  • ピンクや黄色など(バイビット、バイナンスなど)
    主に世界中の個人投資家やアクティブトレーダーが好む暗号資産取引所です。

かつては個人主導だったビットコイン市場ですが、現在ではどの取引所の面積が大きくなっているかを見るだけで、「現在の市場で存在感を持つ参加者層」が誰なのかを客観的に捉えることができます。

4. 実際にチャートを「操作」してみよう!

前回学んだファンディングレート(FR)と、今回の建玉(OI)を組み合わせることで、より深い分析が可能になります。

「FRの熱量」と「建玉の厚み」をセットで見る

  • 【FRが高い + 建玉が増加】:レバレッジをかけた買い手が非常に前のめりになってポジションを積み上げており、急な調整(ロングスクイーズ)への警戒が必要な状態。

  • 【FRが平穏 + 建玉が増加】:過度な過熱感(偏り)がないまま、市場の資金の厚みが増している状態。

このように操作・比較することで、足元の相場がどのような性質の資金で支えられているのかを判別できます。

5. 【実践】2026年5月、機関投資家系資金の存在感と資金の厚み

チャート右上の「Zoom(Last 6-Month)」に切り替えて、直近半年の動態を詳しく観測してみましょう。

直近6ヶ月の未決済建玉。 2026年2月に一度大きく減少した建玉が、4月から5月にかけて再び持ち直しています。特に、オレンジ色で示されるCME(シカゴマーカンタイル取引所)の建玉が高水準を維持している点が目立ちます。

現状の観察:

直近6ヶ月のズームで見ると、2026年2月に建玉の総額が一時的に大きく減少(ポジションの解消)したものの、その後は再び右肩上がりに回復し、5月中旬現在では高い水準帯を維持しています。

また、特徴的なのは、グラフの中でも大きな割合を占めるオレンジ色(CME)の存在感です。

データの解釈:

価格が一定の範囲で推移する中で、建玉が減少せず高水準を維持しているということは、「市場への関心やレバレッジ市場の資金の厚みが失われていない状態」であることを示しています。

さらに、CME(オレンジ)の建玉が高水準を維持していることから、現在の需給環境はCMEを中心とした機関投資家系資金の存在感が高い局面である、と客観的に読み解くことができます。前回見た「ファンディングレートの落ち着き」と合わせると、市場は過熱を避けつつも、しっかりとした資金の土台に支えられている状態が観察できます。

6. おわりに

未決済建玉(OI)は、市場に溜まった「ポジションの総量」を可視化する指標です。

  1. ファンディングレートで、どちらの方向に市場が傾いているか(質・熱量)を測り、

  2. 未決済建玉で、その傾きがどれほどの規模なのか(量・厚み)を把握する。

この「質」と「量」の掛け算をマスターすることで、デリバティブ市場のデータはあなたの投資判断を支える参考材料となります。

次回予告:

第13回は、ついにこの連載の最終回です。これまでのオンチェーン、デリバティブの知見を総括し、現在のビットコイン市場の最大の資金流入源である「ETFフロー(上場投資信託への資金流出入)」のデータを読み解きます。最後まで一緒にデータ活用術を極めましょう。お楽しみに!


💡 編集後記

建玉のチャートで「CMEのオレンジ色」が大きな存在感を示している様子を見ていると、ビットコイン市場における伝統金融プレイヤーの存在感が大きく高まっている歴史の転換点を目撃している実感が湧いてきます。かつては一部の愛好家のものだったデータが、今やグローバルな巨額資金の動向を映し出す鏡になっている。オンチェーンデータを追う楽しさは、まさにここにあると言えますね。

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